【サポルの冒険6】老人の問い

FX大全外伝,サポルの冒険


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あなたはなぜトレードをしているのでしょうか?

「お金が欲しいから」
おそらく多くの人はそう答えると思います。
ですがもう一歩踏み込んでみてください。

なぜ、お金が欲しいのか?
そのお金で何をしたいのか?
そして、その「何か」は
本当にトレードでなければ手に入らないものなのか。
この問いにすぐ答えられる人はあまり多くありません。

私たちは、目の前のチャートに
答えを求めることには慣れています。
ですが自分自身に問いかけることには
驚くほど慣れていないのです。

今日の話は、ひとりの少年が
人生で初めて自分自身に問いかけられたその夜の物語です。
そしてその問いに彼は、
答えられませんでした。

サポルの迷い

焚き火のそばで夜が来ていた。

老人は何も言わなかった。
ただ、焚き火の前に座って枝を一本火にくべた。
火が小さく爆ぜた。

サポルは、その向かいに座っていた。
膝にはまだ商人の地図の残骸を握りしめていた。
紙片は、汗と血ですでに半分以上が読めなくなっていた。
それでもサポルはそれを離せなかった。

サポルの迷い

老人は火を見ていた。
サポルも火を見ていた。
風が岩場を撫でていった。
どれくらいそうしていただろう。

ふいに老人が口を開いた。
「お前は」
低い声だった。枯れているが深い声だった。
「なぜ、地図を探す?」

サポルは、顔を上げた。
老人は、こちらを見ていなかった。
ただ火を見ていた。
問いだけが夜の中にぽつりと置かれた。

サポルは答えようとした。
口を開きかけた。
迷わないため。
そう、言いかけた。

だが、言葉が喉の奥で止まった。
迷わないためと言った瞬間胸の奥で別の声がした。

サポルの迷い

本当にそうか?
お前は、迷いたくないだけか?

サポルは、口を閉じた。
老人は、何も言わない。
ただ、火を見ている。

サポルは、もう一度答えようとした。
正解にたどり着くため。
そう言いかけた。

だがその言葉も口の中で消えた。
正解とは何だ?
誰が決めた正解だ?
お前は、その正解の中身をひとつでも知っているのか。

サポルの中で誰かが
サポルに問い返していた。
サポルはまた口を閉じた。
火がまた爆ぜた。

老人は、動かない。
サポルは三つ目の答えを探した。

母を安心させるため
大人たちに褒められるため
あの商人を見返すため

どの答えも口にする前に
自分の中ですぐに嘘になった。

母は、地図を欲しがってはいなかった。
褒めてくれた大人たちは今のサポルの顔を見ていない。
商人は、もうサポルを覚えてもいないだろう。

どの答えも自分が今ここで
膝に血を滲ませている理由にはならなかった。
サポルはうつむいた。

握っていた地図の残骸が膝の上でさらに崩れた。
「わからない」

サポルはようやくそう呟いた。
声が震えていた。
「わからないんです」
「自分が、なぜ地図を探していたのか」
「もう、わからない」

老人はゆっくりと頷いた。
それだけだった。
老人は何も教えなかった。
褒めもしなかった。
責めもしなかった。
ただ、もう一本枝を火にくべた。
火が少しだけ大きくなった。

サポルの頬にその火の色が映った。
サポルはそれから一晩中、火を見ていた。
頭の中で老人の問いだけが何度も繰り返されていた。

なぜ、地図を探す?
なぜ?
なぜ?
夜が更けていくにつれその問いは
サポルの中で少しずつ形を変えていった。

なぜ地図を探すのかではなく。
なぜ、誰かの答えを自分の答えだと
思い込もうとしていたのか。
サポルは、まだそれに答えられなかった。

ただ、初めて自分自身に
問いかけている自分がそこにいた。
火が静かに燃え続けていた。

サポルの迷い

あなたは、なぜトレードを?
少し立ち止まって考えてみてください。
あなたは、なぜそのトレードを
しているのでしょうか。
なぜ、その手法を選んだのでしょうか?
なぜ、その人の言うことを信じようとしたのでしょうか?

「勝ちたいから」
「稼ぎたいから」
「正解が欲しいから」
そう答えるのは簡単です。

ですが、その答えの奥にはさらに
もうひとつ深い問いが眠っています。
なぜ、勝ちたいのか?
なぜ、その正解を他人の手から受け取ろうとしているのか?

サポルが膝に血を滲ませながらそれでも
地図を握りしめていたのは
迷いたくなかったからではなく。

自分で考えることから逃げたかったからでした。
地図さえあれば考えなくていい。
信じてさえいれば責任を負わなくていい。
それが聖杯探しの正体です。

だからこそ最初に問うべきは
「どの手法が勝てるか」ではなく。
「なぜ、自分は誰かの答えを欲しがるのか」

その問いに口の中で答えが消えていく感覚を一度
味わってみてください。
そこからしか本当の旅は、始まりません。

エピローグ

夜が、明けかけていた。
焚き火は小さな炭になっていた。
サポルは、まだ火の前に座っていた。

老人はいつの間にか眠っていた。
風が岩場を渡っていった。

サポルは、膝の上の地図の残骸に目を落とした。
そして、ゆっくりとその手を開いた。
紙片が朝の風に舞っていった。

サポルは、それを追わなかった。
ただ、東の空がわずかに
白み始めるのを見ていた。


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